初めての香遊び

■基本の作法

  1. ①香は嗅ぐのではなく、「聞く」ということ。
  2. ②香炉の扱い方
    • 左手の上に水平にのせる。
    • 右手で軽く覆い、親指と人差し指の間から聞く。
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  3. ③香の聞き方
    • 背筋を伸ばし香炉を傾けないようにし、深く息を吸い込むようにして3回(これを三息〈さんそく〉という)聞く。吸った息は脇へ軽く逃がす。
    • 一人があまり長く聞き続けていると末席まで良い香りが保てないので、一人三息は必ず守ること。
    • 聞き終わったら礼を失しない程度に手早く次客へ廻す。
  4. ④聞筯〈ききすじ〉の事

    香炉を真上から見た図

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    真の香炉

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    行の香炉

    • 香炉は2種類出てくるが、どちらも聞筋を自分の正面にして聞く。
    • 香炉が廻ってくる時は、向正面になって廻ってくるので、左手の上で静かに手前に廻して聞き、次客に廻す時はまた向正面にして廻す。
  5. ⑤挨拶(礼)の仕方
    • [真]、[行]、[草]の3種類の礼があります。
      [真]:最も丁寧な礼、[行]:ちょっとくだけた礼、[草]:会釈くらいの礼
    • 香元(お手前)と執筆(記録者)が入席する時と退席する時、主客共に一礼。[真]
    • 「お香始めます」「試香または本香たき始めます」「香満ちました」と挨拶した時、主客共に一礼。[行]
    • 小記録、手記録紙(答案用紙)、香炉、記録紙の拝見が廻る時、次客へ軽くお先礼。[草]
    • 香炉は、試香と本香の最初の一炉だけにお先礼。
    • お先礼は、前もってしておき、香炉がきたらすぐに聞けるようにする。
  6. ⑥手記録紙(名乗紙ともいう)について
    • 解答用紙。左が折ってある図、右が開いた図で、○が答えを書く所。

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  7. ⑦名前について
    • 名前は常に名の方(姓ではなく)を記す。雅号、ペンネーム等があればそれを書いてもよい。

    *香席に入る時は、香水、オーデコロン等匂いのあるものをつけぬこと。指輪、時計等もはずすこと。

■香木について

  1. ①香木の基本種類

    ◎七種の香木

    略号 味(御家流) 味(志野流)
    1.伽羅(キャラ)
    2.羅國(ラコク)
    3.眞南蛮(マナバン)
    4.眞那賀(マナカ) 無味
    5.佐曽羅(サソラ) 花一
    6.寸門多羅(スモンダラ) 花二
    7.新伽羅(シンキャラ) 花三
    • 六國七種〈リクコクシチシュ〉
    • 六國五味〈リクコクゴミ〉
    • 苦甘鹹辛酸〈ク・カン・カン・シン・サン〉の五つの味をもつ
    • 香木は「木所〈キドコロ〉」という種類の分類と「香銘〈コウメイ〉」という固有名詞がある。
  2. ②香木はすべて渡来品(輸入品)
    • 熱帯地方の産物。数百年間地中に埋もれていて、種々の自然要素が重なり香木となったもので、人工で出来るものではない。
    • 香木の総称を「沈香〈ジンコウ〉」という。
    • 香道に使われるのは、沈香・檀香〈ダンコウ〉・和木〈ワボク〉の三種で、練香や線香は使用しない。
  3. ③日本に香木が渡来した最も古い公式記録
    • 「日本書紀」 推古天皇三年(595)春
      沈木が淡路島に漂着島人が焚いたところ芳香を発したので、朝廷に献上したと伝えられる。

    • 「聖徳太子略伝」 推古天皇三年春
      土佐南海夜大光有 と記されている。やはり朝廷に献上され、佛教興隆の為、百済の工人に命じてこの香木で観音像を作り、吉野比蘇寺に安置。この像時に光を放つ、と伝えられる。現在法隆寺夢殿観音菩薩像はこの秘佛であると伝えられ、太子はこの像の削り残りの香木を焚き瞑想したと云われる。

      香道ではこの香木を「手函の太子〈テバコノタイシ〉」と云い、香銘を「法隆寺」と称し、最古の名香として伝えられる貴重な香木であるが、実際には現在の佛像の材質はこの地方に多い楠であり、当初のものであるか否か不明。

  4. ④香「木所」の区別
    • 伽羅・羅國・眞南蛮・眞那賀・佐曽羅・寸門多羅・新伽羅の七種類。
    • 産地や最初に渡来した国の名などから分類したもの。
    • この七種類の木所に分類されないものは、香木であっても香道では使用しない。(例外として檀香・和木が使用される。)

    【古人の評香】

    1.伽羅
    その様やさしく位ありて、苦を立つるを上品とす。自然とたをやかにして優美なり。譬へば宮人の如し。
    2.羅國
    自然と匂い鋭なり。白檀の匂ひありて多くは苦を主る。譬へば武士の如し。
    3.眞南蛮
    味甘を主たるもの多し。銀葉に油多く付き位うすく賎し。譬へば百姓の如し。
    4.眞那賀
    匂ひ軽く艶なり。早く香のうすれるを上品とす。香に曲ありて譬へば女のうち恨みたるが如し。
    5.佐曽羅
    匂ひ冷ややかにして酸あり。上品なるは炷出し伽羅にまがふ。自然に軽く余香ありて、譬えば僧の如し。
    6.寸門多羅
    前後に自然と酸ありて炷出し伽羅にまがふ。然れども位薄くして賎しい。譬えば地下人の冠を着たる如し
  5. ⑤香銘
    • 香木につけた雅銘をいう。和歌や物語などの文学から引用したものが多いが、草花、香木の匂いの特徴や色や形、故事伝来などにもとづくものもある。
  6. ⑥蘭奢待〈ランジャタイ〉
    • 正倉院御物 天下第一の名香とされる。天平勝宝八年(756)に光明皇后が聖武帝遺愛品を東大寺に納めた宝物の一つ。目録には 黄熟香〈オウジュクコウ〉と記されている。
    • 切り口には三枚の付箋が付いている。
    • 足利義政:寛正二年九月(約二寸截之)
      織田信長:天正二年三月(一寸八分截之)
      明治天皇
      他に付箋は無いが
      徳川家康:慶長七年六月(一寸八分截之)
      という記述もある。

■組香について

香道には、供香〈ソナエコウ〉・空香〈クウコウ〉・玩香〈ガンコウ〉の三種類がある。供香とは神佛等に供える為の香で、心身を清め敬虔な心持ちで厳粛に行う。空香は式場や室内等で焚き、その場所を清浄な雰囲気にしたり、客をもてなす為に部屋に良い香りを漂わす為のものである。

玩香は香合せ・一炷聞・組香等があり、香を楽しむ為のもので、普通香道を習う時はこの中の組香を繰り返し習練する。

組香とは、数種類の香をそれぞれのテーマにより組み合わせてたき、香りによって主題を表現し、その趣向を味わうもので、例えば源氏物語の中からのテーマであれば、香りで源氏物語を読むという感じになる。

  1. ①形式
    • 組香には試香〈ココロミコウ〉のあるものと無いものとある。
    • 試香のあるものはまず試香をよく聞き、これを記憶してから、試みの無かった香(これを客香〈キャクコウ〉という)とよくうちまぜて順不同にたき、これを聞きあてる。
    • 試香のないものは香数により分類したり、又同香であるか否かによって判断する。
  2. ②証歌〈ショウカ〉
    • 組香のテーマを表現するもので、和歌が最も多く、次いで詩(漢詩)・俳句・詞等がある。
    • 又、証歌が無い組香もある。
  3. ③組香式の見方
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    • 一、二、三、ウはそれぞれ組香を構成する要素です。
    • 一、二、三の香がそれぞれ四包みずつ有り、その内一包みずつが試香です。
    • ウは一包みで試香はありません。
    • 一、二、三それぞれ試香を引いた三包みずつとウ一包み、計十包みが本香となります。
  4. ④下付
    • 各々の答えの下に記すいわば採点法である。

■香道具について

【乱箱の内】

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  1. ①乱箱〈みだればこ〉
    乱盆ともいい、御家流では蒔絵のものが多いが、志野流は桑生地も使用する。香元がお手前をする香道具一式を入れる、深さ7cm位の箱様の盆。セットをする香道具の位置にも流派により一定の方式があり、これを組付〈くみつけ〉とよんでいる。
  2. ②手記録紙〈てぎろくし〉と手記録盆〈てぎろくぼん〉
    手記録紙は、名乗紙〈なのりがみ〉・記紙〈きがみ〉ともいう。香札を使用しない組香のときに用いる。連衆がおのおの自分で書く。四つに折ってあり、先を折り、下に名前を書く。折り目の三つ目に答を書いてたたむ。大体の寸法は奉書を八つ切りにした大きさで、志野流では、奉書を
    十八に切り、これを記紙という。手記録盆は、手記録紙や香札をのせて連衆にまわしたり、本香をたき終わった後、答を書いた手記録紙を回収するのに使用する長方形の小さな盆。御家流のみ使用する。
  3. ③④ 銀葉盤〈ぎんようばん〉[③:本香盤〈ほんこうばん〉、④:試香盤〈しこうばん〉]
    銀葉をのせる台で、漆塗りや唐木製などがある。本香盤は、十か十二に区画し、銀葉を置く場所に梅・菊・桜その他などの形の貝か象牙を象嵌あるいは貼付したもの。試香盤は試香のある組香に使用し、五か六に区画された小型のもの。志野流では、試香は試香包の上に銀葉を置いて試香盤はあまり使用しない。
  4. ⑤火道具〈ひどうぐ〉と香筯建〈きょうじたて〉
    火道具は、灰や銀葉、香木等を扱う七種の道具をいう。火筯、灰押、羽箒、銀葉挟、香匙、香筯
    、鶯(香串)。

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    イ:火筯〈こじ〉
    火箸のこと。穂は銀、赤銅、四分一など。柄は象牙、唐木などで五角六角または丸形。長さ17cm位。炭団を扱い、香炉の灰を灰押で押したあと、箸目をつけるのにも使用する。
    ロ:灰押〈はいおさえ〉
    銀、赤銅、四分一など、先端が丸いのや扇形などいろいろある。長さ12cm~15cm位。香炉の中の灰を押さえて平らにするもの。志野流では扇子型、御家流では笏型が多い。
    ハ:羽箒〈はぼうき〉
    灰ごしらえのときに、最後に香炉の内側、ふちの灰を払うのに用いる。柄は唐木・象牙など。長さ12cm~15cm位。昔はトキの羽根がほとんどである。
    ニ:銀葉挟〈ぎんようばさみ〉
    銀、赤銅、銅と銀の合金製など。長さ9cm位で、流儀により種々の形がある。銀葉をはさんで灰の上に置くなどピンセットのようなもの。
    ホ:香匙〈こうさじ〉
    匙の部分は銀などの金属製で、花の形などさまざまある。柄は象牙・桑・唐木。長さ16cm位。香木を香包よりすくい、銀葉にのせる。
    ヘ:香筯〈きょうじ〉
    香箸〈こうばし〉ともいい、象牙、桑、唐木製などがあり、四角で先が細くなっている。長さ16cm位。香木をはさむのに用い、志野流では木香箸〈きこうばし〉とよんでいる。
    ト:鶯〈うぐいす〉
    古くは竹製もあったが、銀や真鍮などの金属製が多く中央がいくらか太い丸い棒。長さ10cm位。畳へさし、使用済みの本香包をこの鶯にさして置き、出香の記録を書くときに役立てる。

    香筯建は、火筯建・火道具建ともいう。香元が香手前をするための火道具(七つ道具)を差し納める筒で、納め方に流派により一定の形式がある。御家流では、長さ7~8cmの筒型で六角形が多い。金、銀、赤銅など金属製できれいな透彫〈すかしぼり〉がしてある。志野流では、平安時代の遊戯具、投壺の型を模したものもある。

  5. ⑥重香合〈じゅうこうごう〉
    銀葉を入れる。最下段は、内側に金属を張ってあるものが多く、使用後の熱くなった銀葉やたき空を入れるようになっている。

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  6. ⑦総包・惣包〈そうづつみ〉
    組香の試香包と本香包を入れておく包みのこと。その組香にふさわしい絵が描かれていることが多い。鳥の子、布張、金箔置などがある。

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    十組香総包

  7. ⑧⑨聞香炉〈ききごうろ〉[⑧:二の香炉、⑨:一の香炉]
    香を聞くための香炉で、青磁、染付が多く、金襴手、白磁などの陶磁器や蒔絵を施した漆塗りもある。一対で用い、原則として三脚・けむりがえしのついていないもの。直径6~7cm、高さが6~8cmある。

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【打敷の上】

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  1. ⑩打敷〈うちしき〉
    畳の上に直接敷く布製の敷物で、華やかな絹の織物で額縁仕立である。御家流のみに使用する。畳半畳よりやや小さいのが正式であるが、ほかにもいろいろな大きさがある。
  2. ⑪地敷〈ぢしき〉
    敷紙〈しきし〉ともいう。香元が手前をするとき、諸道具を並べる敷き紙で、現在では厚い紙に金銀の箔を裏表に貼り、絵を描いてあるものもある。八つに折りたたむようになっている。御家流では打敷の上にこれを置く。(金-陽・蓬莱の絵、銀-陰・塩竈の絵)
  3. ⑫⑬香包〈こうづつみ〉[⑫:試香包〈こころみこうづつみ〉、⑬:本香包〈ほんこうづつみ〉]
    組香で使用する小片にした香木を包む、竹紙または和紙を畳紙〈たとう〉にしたもの。横2cm、縦4cm位で、試香包と本香包とがある。これらの小包の折方には組香により種々ある。白紙の鳥の子紙を使用するのが本式であり、試の包は折方を変え、色紙を用いてもよい。
○香炭団〈こうたどん〉
直径2cm、長さ2.5cmの小さな筒形の炭団で、香木を加熱し発薫するように香炉の灰にうめて用いる。昔は桜炭の細いのを切って使用していたが、炭団の火持ちをよくするための工夫をし、香元自ら製作した。img17
○銀葉〈ぎんよう〉
香木を間接に加熱するための隔火具である。約2cm半角のもので、四隅をおとすものが多い。雲母の板で、金や銀で覆輪してある。香炉に埋けた炭団の上に灰をかぶせ、その上に香木をのせた銀葉を置いて香りを聞く。古くは銀の薄い板を用いたことからこの名がある。